二、珈琲産地と各珈琲の特質


 ○珈琲名称は通例産出地名またはその輸出港名で呼ばれますが、ここに記載するものはその代表的な呼名のみを記します。
 ○また、特質欄で豆型を記さないものは、標準の中形の場合です。

著名産地 代表珈琲の名称及び特質
1、アジヤ大陸の南東部
a,印度
 マラパール海岸に接した西ガッツ山脈の傾斜面、
その他マイソール、クルーグ、ニルギリの丘陵地。
「マラパール」小形、青緑色。
濃度と芳香あり、
この他
「マイソール」「テリチェリー」
「クールグ」「ツラバンゴア」等の
各種がある。
低地産のものは大形となり、暗緑色を呈す。
一体に低地産は高地産よりも大形。
b、セイロン かつて盛大であったが葉の病害等のため
疲弊して以来衰微している。
c、佛領印度支那
 トンキン、アンアン等
「ボーボンロンド」
モカ珈琲に似た小形の優良品。
「ボーボンレイロ」は一層小形。
「グランドボーボン」は大。その他に
ロブスタ種がある。
d、マレー半島
ビナン付近
ロブスタ種、リベリカ種が栽培されている。
e,インドネシヤ
ジャワー−−−ブリンガー、チェリボン、
ブイテンゾルグ、バタビヤ等
 スマトラ--マンデリン、アンコラ、
アイエルバンキース、バクン、バレンバン等
「ブリンガー」チェリボン」「クロエ」等
丸味を帯びて小形。青または黄色。
爽やかではあるが濃度は少い。
「マンデリン」大形で黄色または褐色を帯び、
芳香と適度の苦味を持つ絶品で、
「アンコラ」「アイエルバンキース」とともに
ファンシーと呼ばれる。
f、セレベス 「ミナハツサ」「メナド」
大形で黄色を帯び、良好な香味はスマトラ産に類似し、調和された苦味を持つ濃厚な優良品。
g、バリ、ロンボク、マラカス、チモル及びボルネオ等。 各島名にて呼ばれ、スマトラ産に次ぐアラビカ種の良品がある。
2,オセアニア(太平洋諸島)
a、フィリピン、サモア、ニウカレドニヤ、その他の諸島及び豪州クインスランド。 あまり重要視されていない。しかしいずれの島嶼においても多少は栽培されている。
b、ハワイ島
 コナ、ブナ、ハマクアの各地。
「コナ」稍々大きく、半透明の青色。鋭い酸味がある。採集後相当年数を経たものは醇化されてモカに似た風味を呈する。
3,北米
メキシコ
ベラクルズ、ブエブラ、オアハカ、チャパスの各州。
「コアペック」「オアハカ」「ウァトウスコ」「カラコリーヨ」等の銘品がある。優良品は青味を帯びた黄色の美しい豆、芳香と濃度と、調和された酸性とを持っている。
4、中米
aグヮテマラ
コパン、コスタリカ、ツンバドル、チュバの産地及びアンティグア、モラン、アマテイランの高地。
「コバン」稍々大きな光沢ある青色、「アンティグア」は燧石色をなし、ともに濃度あり、香味に優れた酸性の優良品。「コバン」は強酸のため苦味を呈す。
b、サルバドル
ラパス、サンタアナ、サンビンセンテ、サンタテクラ、アウマチャバム等。
「サンタアナ」「サンタテクラ」滑らかな緑色。グヮテマラ産には稍々劣る中性の味。
c,コスタリカ
カルタゴ、サンホセ、アラフエウ、グレシヤの高地等。
「コスタリカ」青緑色。酸性多く、特に苦味を呈すことがある。よく保存された古豆は優秀となる。
d、ホンヂエラス
サンタバーバラ、コバン、コルデス、ラバス、その他。
「ホンヂュラス」形状丸味を帯びて、青緑色を呈し、香味共低い。
e、ニカラグァ
マタガルバ、マナグァ、カラゾ、チョンクレスその他
「マタガルパ」大形で淡青色をなし、相当の酸味を持っている。
f、パナマ
ブガバ及びボクエテ地方。
「パナマ」緑色を帯びた並型の豆。濃厚で強い香がある。
5、西印度諸島
a、ハイチ
 ハイチ及びサントドミンゴ両共和国に分かれている全島、特に東都のサントドミンゴとサンチャゴ、バニ地方等。
「ハイチ」「サントドミンゴ」ともに青緑色。酸性で香味ともにかなり良いが、まだ高級品としては産出されていない。
b、ジャマイカ
 ブリウマウンテン及びマンチェスター、セントトマス、クラレンドン、セントアンドリウ等。
「ブリウマウンテン」淡青緑色。甘酸苦共よく整った香味は、珈琲中絶品の一つとして数えられる。低地産は豆形大となりこれに劣る。
c、ポルトリコ
ウツアド、ラレス、ヤウコ、マリカオ、ポンセ他全島各地。
「ポルトリコ」青灰色のさして特徴のない平凡な風味。
d,グッドルップ、ドミニカ、マルテニック、トバコ、トリニダットの其の他の島嶼。 この群島中のすべての島嶼に産するものはいずれもどこか類似しているが、産出量は多くない。
6、南米
a、コロンビア(産出世界第二)メデリン(アンチオキヤ首府)マニザレス(カルダス首府)ボゴタ(連邦地方首府)ブカラマンガ(サンタンダー首府)トリマ(イバグエ首府)サンタマルタ(マグダレナ首府)の各地方其の他一帯。

コロンビア珈琲は次の如き分類がされている。
 カフェ・ツリラド(自然または日光乾燥品)。
 カフェ・ラバド(精洗されたもの)。
「メデリン」形状不整。黄味がかった淡緑、から濃緑の各様があり、香味共極めて豊潤な優秀品の一。「マニザレス」は稍々劣るがこれに類似している。「ボゴタ」は「メデリン」より少し長目のよく整った優良品。「ブガラマンガ」はこれに次、「トリマ」は形状大で美しい一般向きの豆である。

 コロンビア珈琲の等級。
エキセルソ(最優秀品)ファンタシヤ(エキセルソに次ぐ)エキストラ(極上品)プリメラ(第一級品)スガンダ(第二級品)カラコル(ピーベリ)モンスツルオ(大形)コンスモ(不良品)バシラ(屑豆)
b、ベネズェラ
テイエラテムプラダ山中、テイエラフリア山麗その他。
「カラカス」形状短小で淡青色。香味佳良で濃度は相当にある。其の他「メリダ」「ククタ」「マラカイボ」等。
c、ブラジル(産出世界第一)
 サンポーロ州
 ブルボン島産のアラビカ種を原種とするブルボンサントスは、アラビカ種の正統の優秀品であるが、植え付け後成熟し始めてニ、三年経つとブルボンの特徴を失って普通の半豆に転化する。

サンポーロ、ミナスジェラス州両州の中間地帯。

リオデジャネイロ州及びミナスジェラス州。

エスピリトサント州。

パイヤ州。

其の他
「ブルボンサントス」小形で、レッドセンターと称する赤い線を持ち柔らかい酸味がある良品。
「サントス豆形は大小さまざまで、淡黄または淡緑色。極めて尋常な香味を持ち、配合珈琲の主体となる。「サントス」は次の等級に分かたれている。
 NO1、ファイン Fine
 No2、スウペリア Superior
 No3、グツド Good
 No4、レギュラー Regular
 No5、オーディナリー Ordinary
 No6、エスコルハ Escolha
「ハーシーサントス」 一種の薬臭を帯び「「サントス」よりも低く評価されている。
「リオ」サントスに比して形状大。強き刺戟性と薬臭がある。収穫後数年を経たものはいわゆるゴールデンリオとなり緩和されて来る。
「ビクトリヤ」 豆形大で外観はよいが、黒褐色またはにごった色をなし、異臭がある。
「バイヤ」 精製に使われる焚火のため煙くさい。
「マラゴシベ」 野生のアラビカ種の発見されたもので形状甚大。緑から淡褐までさまざまな色をなす。香味共低い。
d、その他の南米諸国
 エクアドル、ペルー、ボリビヤ、チリ、パラグァイ、アルゼンチン。
これ等の国々には必ずしも適地が無い訳ではなく、また多少産出されているが、その量は甚だ少なく、また特に良品はない。
7、アフリカ
a,エチオピヤ

シイダモ、カファ、グマの野生種。

ハラル地方
「アビシニヤ」 豆形稍大。青または黄色。アラビヤモカに似た風味を持ち、ロングベリー・モカと称されている。

「ハラル」前者と大体同じであるが、栽培されており、人によってはアラビヤモカに比肩することもある。
b,ケニヤ及びウガンダ 「ケニヤ ブルボン島から移植されたアラビカ種の良品が、漸時栽培されつつある。
 「ウガンダ」 ロブスタ種を産す。
 
c,白領コンゴー
20世紀初頭蘭領東印度諸島に移植されたロブスタ種は当地原産。
「コンゴー」 相当量産出されているが、その品種はロブスター種であり野生種が多い。
d,その他ザンジバル、ヌヤサランド、リベリヤアンゴラ、ナタル、及びブルボン島 この各地方にはしばしば野生とともに計画農場あり、ブルボン島の如く良種の原種も出しているが、産出はさ程でない。
8、アラビヤ
 イエーメンのブルゴサ及びサーナの各産地で、またり、ヤフイ、サナニ、アネジ、シヤルキ、ハイミハラジ等は名産地。全てモカ港から輸出されモカコーヒーの名を生じたが、現在はアデン及びホデイダから主として輸出される。
 モカ珈琲はアビシニヤで原産されたコヒァ・アラビカ・Lの最も洗練純化されたものである。
「モカ」 高地産は堅く短小で、淡黄または淡緑色を呈し、「マタリモカ」は特有の香気ある優秀品で、温雅な酸味と、ほのかな甘味と、滑らかな濃度とを、あわせ持っている。
 紅海海岸テハマ等の低地産は、形状不整でその他の特徴は前者に類似しているが、その品質は劣っている。
 モカ珈琲は最上級(エキストラ)、第一級A,第二級、第三級に等級付けられ、第一級A以下には、その等級に応じて、屑豆が混入されている。


付記
 わが国においては徳川末期より、明治20年頃までの間に、珈琲の栽培が、小笠原、琉球、その他薬草園で多少試みられた形跡があります。台湾領有後恒春林業試験所において、また大正年間嘉義農事試験支所その他で試験し、その後民間事業として有望視され、昭和5年花蓮港の住田物産株式会社台湾農場や、嘉義木村コーヒー園、斗六園南産業コーヒー園が興り、ハワイコナ等のアラビヤ種の栽培が行われ相当の成績をあげていました。また野村東印度殖産ではスマトラの北部に1926年以来4000エーカーの土地を租借し、良好なロブスタ種の栽培に成功し、注目される大珈琲園となつていました。また台湾の珈琲園に先立ちサイパンでは大正15年から住田物産等により南洋コーヒー株式会社が興されていました。

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